ポスト2020枠組における戦略的コミュニケーションと推進組織の重要性について 世界のこれまでの10年の経験から学ぶ【開催報告】
開催日時 | 2022年12月9日(金) |
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会場 | COP15(カナダ・モントリオール) CEPAフェア会場 |
主催等 | 2030生物多様性枠組実現日本会議、環境省 |
参加者 | 85名 |
費用 | 参加無料 |
サイドイベント概要
2022年12月9日、カナダ・モントリオールで開催されたCOP15 のCEPAフェア会場にて、「ポスト2020枠組における戦略的コミュニケーションと推進組織の重要性について 世界のこれまでの10年の経験から学ぶ」と題したイベントが、2030生物多様性世界枠組実現日本会議(J-GBF)と環境省の主催で開催されました。
イベントには、エリザベス・ムレマ生物多様性条約事務局長も冒頭あいさつに駆け付け、GBFの合意とその実施の重要性を参加者に訴えました。
その後、J-GBF会長代理兼IGES 理事長の武内和彦様より、開会の挨拶とイベントの趣旨説明ならびに、J-GBFの先駆けとして10年間活動した国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)の活動やその特徴を紹介しました。武内様からは、J-GBFがUNDB-Jからの教訓を引き継ぎつつ、ネイチャーポジティブ宣言などを中心に、多くの関係者にCOP15で採択を予定しているポスト2020生物多様性世界枠組(GBF)の実施を呼びかけていく計画であることを紹介しました。
その後、国際先住民地域共同体フォーラム(IIFB)のコミュニケーションリーダーのアリス・マシュー(Alice Mathew)さん、生物多様性世界ユースネットワーク(Global Youth Biodiversity Network)のラテンアメリカチャプターのアラン・バルデスさん、IUCN教育コミュニケーション委員会委員長のショーン・サウシー(Sean Southy)さんから、過去の10年間の振返りと共に、次の10年のポイントをパネルディスカッションで話し合いました。
パネルディスカッションでは、J-GBFの取組が、今後、世界各国で、戦略的なコミュニケーションを促進する多くのプラットフォームを確立するための大きな一歩になることが共有され、また、今後開催される締約国会議でも、今回のイベントのような戦略的コミュニケーションの前進を共有し合う継続的に、場づくりが必要との認識が示されました。
最後に、環境省生物多様性主流化室長の浜島直子より、参加者や登壇者への感謝と共に、日本としてGBFの達成に力強く貢献していきたいとの挨拶が行われ閉会となりました。100名が座れるCEPAフェア会場には、86名が参加し、質疑応答も活発に行われました。
パネリストの発表要旨
生物多様性国際先住民フォーラム(IIFB)アリス・マシュー氏
「まず、先住民族の土地に敬意を表し、コミュニティへの感謝を述べました。先住民地域共同体(IPLC)は単なる利害関係者(ステークホルダー)ではなく、参画する権利を持つ人(RIGHTホルダー)でもあることを認識してほしい。ポスト2020年の生物多様性の枠組において、IPLCは大きな役割を担っている。生物多様性のための適切なコミュニケーションのためには、世界中のIPLCのような少数民族のコミュニティを意思決定や情報共有に参加させることが重要である」
Global Youth Biodiversity Network アラン・バルデス氏
「過去10年もこれからの10年も、若者のコミュニティーが重要な役割を持つ。なぜなら、私たちが今日下す決断は、まさに若者の未来に影響を与えるからです。GYBNのメンバー数が最近増えてきています。その結果、世界の若者の能力養成が進んでいる。各国のGYBN支部は、全体としての理念を共有しつつも、独自のネットワークを作り、様々なコミュニケーション手段を通じて生物多様性の認知を高めている。現在、GYBNはコミュニケーション戦略として、ソーシャルメディアにおける認知度を高め、インターネットの持つリーチ力をフルに活用している。しかし、インターネットやソーシャルメディアにアクセスできない人たちとも効果的にコミュニケーションする方法を持つことも念頭に置かなければならない。」
IUCNの教育・コミュニケーション委員長 ショーン・サウシー氏
「まず、私たちの住む世界が、気候の危機、生物多様性の危機、そして社会の危機と、さまざまな危機に直面している。このような状況下では、戦略的なコミュニケーションが非常に重要だ。戦略的コミュニケーションとは、1つのイベントや1つのパンフレットではなく、1つのムーブメントを起こすことである。ショーンは講演を通じて、戦略的コミュニケーションを成立させるために必要な4つの主要なポイント、あるいは変化について述べた。まず1点目は、「聴衆を知ること」「誰に、何のために情報を伝えるのかを知ること」。2つ目は、ネガティブなメッセージ(損失など)を使わず、「ロスではなくラブ」という自然とのつながりを強化し、自然に対する愛情を再認識してもらうことを強調しました。3つ目のポイントは、私たちがリーチしようとしているコミュニティに対して、信頼できる声を使うことです。そして、4つ目のポイントは、生物多様性に関する会話ができるプラットフォームと複数の場所を作ることでした。そして、さまざまな声やアクターが必要だが、それらの声の間には一貫性がなければならない。」
(株)バイオームCEO・J-GBF行動変容WG専門委員 藤木庄五郎氏
「生物多様性の危機を語る上で、企業も参加することが重要だ。コミュニケーションや情報の受け取り方がうまくいかず、いくつかの企業が無意識のうちにグリーンウォッシュを行っている。特に生物多様性の危機については、日本のような国では、民間企業による知識の共有やコミュニケーションがまだまだ不足していると考えられる。 特に生物多様性の問題については、他のプラットフォームと同様に、企業がこれらの問題について情報を共有し、入手できるプラットフォームが必要である。そして、そのようなプラットフォームを利用して、共有された知識をもとに協働を進めることが重要だ。」
パネルディスカッションの質疑の一つである「日本のJ-GBFの印象と課題」については、「IPLCこのプラットフォームの中心にあることが重要である。」「J-GBFのプラットフォームは、情報へのアクセスを持ちながら、コミュニティと人々を結びつけているところが興味深い」「J-GBFは、戦略的なコミュニケーションを促進する多くのプラットフォームを確立するための大きな一歩となる」などの意見が出されました。
最後に、質疑応答が行われ、参加者からは、接続や露出の少ない先住民族のコミュニティをどのようにこのようなプラットフォームに取り込むか、といった重要な質問が出されました。 また、企業に対する質問では、生物多様性や気候変動に関する企業への信頼を高めるにはどうしたらよいか、といった質問が出されました。ファシリテーターの道家哲平氏(日本自然保護協会)からは、「企業の中の人材も多様であり、NGOや先住民地域共同体の窓口になる企業の方や部署もどのように社内を説得するか真剣に悩んでいることも多い。その意味では同じ意識・課題を共有する者同士、真摯に対話していくことが信頼構築の鍵である、というのが自分の経験だ」との回答を行いました。
展示ブース
環境省ブースを設置し、J-GBFの取組のほか、30by30・ビジネス・ABS・外来生物に関するパネルや、里山をテーマにした動画の放映、各自治体・企業の取組紹介カード等で日本の取組をPRしました。
ユースの派遣
J-GBFへの寄付金により、J-GBF構成メンバーのChange Our Next Decade、生物多様性わかものネットワークのCOP15参加・活動費の一部を支援しました。
両団体から合計6名が参加。展示、政策提言、おりがみワークショップを通じた交流、世界生物多様性ユースネットワーク(GYBN:Global Youth Biodiversity Network)、サイドイベントで発信等を行いました。
COP15 におけるサイドイベント、ブース出展、ユースの派遣については、積水樹脂株式会社様、サカタインクス株式会社様からの寄付を一部活用して実施いたしました。