【30by30アライアンス】 メールマガジンVol_124

特集 2026年10月秋号
Case1.ダイフク滋賀事業所「結いの森」 取組ご紹介(2026/10/7)

【30by30特集】工場緑地からはじまるネイチャーポジティブ
秋の風が運ぶ、「自然共生サイト」の物語

みなさま、こんにちは。
いつの間にか朝晩の風が涼しくなって、すっかり秋の気配ですね。
30by30アライアンスメールマガジンでは、2週間に一度の通常配信に加えて、今年度から特集号(4月/春・7月/夏・10月/秋・1月/新春)の配信を開始しております。

今回の『30by30アライアンスメルマガ 特集/秋号』では、「工場や研究施設の敷地内における生物多様性保全の活動」をテーマに、それぞれの立地や特徴を生かしながら自然との共生に取り組む、個性豊かな3つの実践事例を10月7日、14日、21日の3週にわたりお届けします。
「工場の敷地」と聞くと、無機質な建物や生産設備が立ち並ぶ風景を思い浮かべる方も多いかもしれません。けれど、企業が大切に管理している敷地の中には、豊かな自然がそっと育まれ、地域の生き物たちを支える大切な拠点(自然共生サイト)になっている場所があるのです。
本日配信の【第1弾】を皮切りに、工場緑地での活動を考えている企業のみなさまや、自然を通じて地域との温かい関係を築きたいと願うみなさまにとって、きっと素敵なヒントになるお話を毎週お届けしていきます。ぜひお楽しみください。
※なお、2週間ごとの通常版メルマガは、明日配信いたします。

Case1. 自然との共生を育む工場緑地
ダイフク滋賀事業所「結いの森」(滋賀県蒲生郡日野町)

足元の自然の「発見」と、試行錯誤の積み重ね

最先端の物流システムを支える物流機器製造工場、ダイフク滋賀事業所の広大な敷地の一角に、2.63ヘクタールの森林や水辺からなる「結いの森」が広がっています。

2014年から始まったこの場所の歩みは、ただ自然を守るだけでなく、水と緑、自然と人、そして人と人をそっと結びつける、温かいコミュニケーションの舞台となってきました。

始まりは、2013年に行った生物調査でした。当時、この森を訪れた琵琶湖博物館の学芸員の方から「ここは、すばらしい自然環境ですよ…」と言われたことが、その最初の一歩を踏み出す後押しとなったそうです。調査の結果、想像を遥かに超えて多様な生きものたちが暮らし、貴重な希少種「ヤマトサンショウウオ」までもがひっそりと生息していることが分かりました。鈴鹿山系の西側に位置し、湿地やため池が点在する滋賀県日野町。そこで日々働く人々にとって、敷地内の豊かな緑や水辺はあまりにも身近で、当たり前の存在でした。ダイフクの生物多様性保全は、調査を通じて、事業所内に多様な生きものや希少種が生息していることを確認し、その自然の価値を改めて認識したことから始まりました。こうして2014年(5月22日国連生物多様性保全の日)、「水と緑、自然と人、人と人を結ぶ」という願いを込めて「結いプロジェクト」が産声をあげたのです。

実は、現在この活動の中心を担っている担当者の方も、生物の専門家ではありませんでした。もともとは製造部門の調達業務などに携わり、異動してきた当時は、まだ今ほど明確な「自然との共生」のビジョンもなかったため、「この活動をどのように続けていけばよいのだろうか」と不安を抱えていたこともあったそうです。

分からないことがあれば専門家に尋ね、一緒に森を歩き、教わった方法を試してみる。うまくいかなければ原因を考え、また方法を変えてみる。10年以上にわたる「結いの森」の歩みを支えてきたのは、最初から用意された完璧な計画書ではなく、自然と向き合いながら地道に続けてきた試行錯誤の積み重ねでした。

(3枚の写真)森林、水辺のある公園の風景、網を持って歩く人

届かないなら会いに行く――日常へ自然を届ける発想の転換

「結いの森」には、ヤマトサンショウウオを大切に育む保全池や散策路が整備され、隣接する社員食堂のテラスからもその様子を眺められるよう工夫されています。お昼ご飯を食べながら、ふと窓の外を眺めればトンボが飛び、水鳥が池に降り立つ様子が見られます。また、社員やその家族がトンボを観察したり、泥だらけになって水生昆虫などの生きものを探したりする自然観察会も行ってきました。

しかし活動を続けるなかで、担当者には一つの悩みがありました。社外からの問い合わせや見学が増える一方で、広大な事業所内で進めているさまざまな生物多様性保全活動が社員にまだ十分知られていなかったのです。

そこで始めたのが、お昼休みの「出張観察会」でした。事業所内にあるハッチョウトンボ保全湿地で、その日の朝に捕まえたトンボを虫かごに入れ、社員食堂へ持って行って紹介する。社員が生きものに会いに来るのを待つのではなく、生きものの方から社員のもとへ届けるという発想でした。

「結いの森」での自然観察会や近隣小学生向けの環境学習を通じて得た経験は、ハッチョウトンボの「出張観察会」という新しい取組のヒントにもなりました。場所や方法は異なっても、自然を守り、生きものとの出会いを通じて人と自然、人と人を結ぶという思いは、事業所全体へと広がっています。

(3枚の写真)森林と池、ヤマトサンショウウオ、ハッチョウトンボ

結いの森から地域へ広がる保全の輪

ダイフクの活動は、事業所内の「結いの森」だけにとどまりません。2016年からは、滋賀県内に事業所を置く企業4社を中心に、専門家、行政、博物館などと連携する「生物多様性びわ湖ネットワーク(BBN)」に参画し、トンボをテーマとした保全活動にも取り組んでいます。各社が自社の緑地で調査や保全を進めるだけでなく、県内の公園におけるハッチョウトンボの保全や環境整備にも協力しています。

活動成果は毎年、琵琶湖博物館で展示され、多くの来館者へ発信されています。さらに、約10年にわたる企業連携の歩みをまとめた『トンボと企業と生物多様性』が、2026年に琵琶湖博物館ブックレットシリーズ第18号として刊行されました。事業所の森で始まった取り組みは、地域全体の生物多様性保全へと広がり続けています。

(6枚の写真)森を探索する小学生、写真や手作りトンボなどの展示物をみる人たち

自然共生サイト認定がくれた振り返りの機会

ダイフク滋賀事業所「結いの森」は2024年に「自然共生サイト」の認定を受けました。ダイフクにとって、自然共生サイトへの申請は、認定を受けるためだけの作業ではありませんでした。

これまで続けてきた活動の記録を整理してまとめなおし、自分たちが守ってきた自然の価値を改めて確認する機会となったのです。また、今後の保全活動の方向性を見つめ直すきっかけにもなりました。認定はゴールではありません。これまでの歩みを振り返り、次の一歩を考えるための新たな出発点となっています。

「まずは、自分の事業所の中に、どのような自然環境があり、どんな生きものたちが暮らしているのかを、『知る』ということ。それこそが、何よりも確実な最初の一歩だと思います」

社内に専門家がいなくても構いません。地域の博物館や大学、専門家に相談しながら、一歩ずつ進めていくことができます。

足元の自然に気づくことから始まった「結いの森」の歩みは、小さな一歩の積み重ねが、人と自然、そして地域との新たなつながりを生み出していくことを教えてくれています。

気づきから始め、つながりによって育てるための道しるべ

もし皆さまが、ご自身の事業所敷地内での新しい一歩を迷われているなら、この事例はたくさんの優しいヒントを教えてくれます。

・身近な自然を、まず「発見」すること
見慣れたいつもの景色を、見つめ直すことで、これまで社内では気づけなかったその場所にしかない自然の価値が浮かび上がります。

・社内に専門家がいなくても、地域の様々な方の力を借りること
大学、博物館、地域団体、専門家など、地域には様々な知見や経験を持つ方々がいます。そういった方たちの知恵を借りることで、一企業だけの枠を越えた確かな保全の輪が広がります。

・申請を通じて、これまでの歩みと今後の方向性を整理すること
自然共生サイトへの申請は、認定を得るだけでなく、これまでの日々の活動を改めて見つめなおし、自分たちの活動の価値を再発見し、これからの方向性を考える新たな出発点になります。

関連リンク

株式会社ダイフク「結いの森」公式ページ

環境省:自然共生サイト詳細ページ(ダイフク滋賀事業所 結いの森)


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(環境省 自然環境局 自然環境計画課)

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