【30by30アライアンス】 メールマガジン Vol_118

特集 2026年7月夏号 番外編4
東京大学インタビュー完全版(2026/7/15)

東京大学 『東京大学千葉演習林』
百年の森が紡ぐ、生物多様性と共生のかたち

日本初の大学演習林

房総半島の奥深く、約2,200ヘクタールという圧倒的なスケールを誇る東京大学千葉演習林。2026年に「自然共生サイト」に認定されました。ここに地方固有のモミやツガを主体とした天然林が残されているのには、ある特別な理由がありました。

江戸時代、周辺の広葉樹は炭の原料として使われていましたが、針葉樹は厳しく「禁伐」とされ、大切に守られていました。しかし、明治以降になると演習林の外側ではこれらの針葉樹も次々と切り倒されてしまいます。千葉演習林は1894年11月に、日本初の大学演習林として創設されました。大学の演習林、そして隣接する清澄寺の社寺林であったという特別な砦であったからこそ、百年以上の時を超えて、この地域固有の原生的な自然が残されてきたのです。

「一般非公開」という強み

この豊かな森では、昆虫の新種2種や、千葉県初記録となる昆虫がなんと「280種」も確認されていることに驚かされます。なぜ、これほどまでに素晴らしい生物多様性が保たれているのでしょうか。

「演習林は、一般の方に開放していないクローズドな環境です。それは、生きものたちにとって、また研究者や学生にとっても実は最大のメリットになっているんです」と話してくださったのは、演習林の管理を統括されている鎌田先生。

環境省でも絶滅危惧種の具体的な生息場所は秘匿されますが、それは常に違法採集・捕獲というリスクと背中合わせだからです。一般の方が自由には入れない演習林は、希少種にとってのシェルターでもあり、また、研究者や学生たちが調査・研究をしやすい貴重な環境となっています。演習林では、千葉県立中央博物館と協定を締結して動植物のインベントリー調査を続けており、その積み重ねによって、初記載種が多数確認されています。

(2枚の写真)古い花を記録した資料、方眼罫のついたカッターマットの前に置かれた花

切り捨て間伐と「二ホンキバチ」のジレンマ

しかし、この歴史ある美しい森も、今まさに日本の林業が直面する大きな苦境に立たされています。地形が急峻で林道から遠い奥地では、伐採して木を運び出すだけで莫大な赤字が出てしまいます。2010年以降、演習林では、間伐した木を山へ残す「切り捨て間伐」を選ばざるを得ませんでした。

「木を山に置いておくと、それを利用する『ニホンキバチ』が爆発的に増えてしまうんです。密度が上がると、彼らは生きている元気なスギやヒノキにまで卵を産み付け、一緒に共生菌を植え付けてしまう。その結果、木材が変色したり強度が落ちたりして、価値が大きく落ちてしまいます」

「タダでいいから、持ち出して、活用してほしい」──。

「だからこそ、私たちは今、この問題を一緒に解決してくれる民間のパートナーを探しています」鎌田先生の言葉に、一筋の強い希望が宿ります。「切り捨ててしまうはずの材なら、無償で持っていっていただいて構いません。その搬出費用を企業の環境投資として負担していただき、運び出した木材を工芸品やオフィスの資材など、新しい場所で活かしてくれる企業が現れてくれたら、これほど素晴らしいWin-Winの関係はありません」

歴史あるこの森の樹齢100年以上にもなる貴重な木材が、有効に活用されるような新たな繋がりが生まれ、森の手入れが更に進められるような好循環が生まれることを切に願っています。全国的にも、戦後に植えすぎてしまった人工林を豊かな天然林へと戻す取り組みが進められていますが、千葉演習林ではこの問題についても民間のパートナーを探しています。

(3枚の写真)草を手に取る命綱をつけた人、木を調査をする2人、大きな網を広げて調査作業をする人

「不要な生きものはいない」──多様性の大切さ

これまで森林害虫や個体群・群集生態学について研究してきて、実感しているのは「多様性の大切さ」。さまざまな生きものがいる環境では、特定の昆虫が増えすぎることが起こりにくくなります。

「そもそも『害虫』とは人の都合による呼び方で、本来の自然には不要な生きものはいません。天然林では、多くの生きものが関わりあい、バランスが保たれています。森林を守るために大切なのは、そのバランスを支える生物多様性なのだと感じています。」

ヒント:アップサイクルで新たな価値創出を推進するパートナーに

  • 間伐材の搬出をサポートし、付加価値の高い製品へアップサイクルすることで、ストーリー性のある木材製品を生み出すことができます。

  • 専門的な知見を有する大学と一緒に、長期データを有する演習林をフィールドに人工林から自然林への遷移を推進するとともにデータを世界に発信することができます。

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(環境省 自然環境局 自然環境計画課)

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