【30by30アライアンス】 メールマガジン Vol_118

特集 2026年7月夏号 番外編1
東京農工大学インタビュー完全版(2026/7/15)

東京農工大学(農学部) 『東京農工大学府中キャンパスと本町水田』
~昭和9年から続く「生きた土壌」が紡ぐ、豊かな生態系と日本酒テロワールの物語~

「土の記憶」が、都会の小さないのちを呼び戻す

大都会のすぐそば、首都圏の農林業科学技術の拠点として輝く東京農工大学の府中キャンパス。ここには、なんと250種以上の在来植物や、東京都のレッドリストに載っているような貴重な動植物のいのちが今も豊かに息づいています。

「どうして、これほど豊かな自然が残されているのだろう」

その秘密を紐解いていくと、昭和9(1934)年に東大演習林として使われていた土地にキャンパスを開設してから大切に守られてきた、豊かな「土の記憶」へと行き着きます。当時の土壌が引き継がれてきているからこそ、都市部では少なくなった昆虫や爬虫類、両生類たちが安心して暮らせるのですね。

(写真)大自然に囲まれた大学キャンパス

農学部では、財務・環境委員会の下に「緑地保全管理小委員会」という専門の組織を置き、キャンパスの植生管理を行っています。敷地を「樹林エリア」「教育研究エリア」「アメニティエリア」の3つにゾーニングし、それぞれの目的に応じたきめ細かな管理を実践。驚いたのは、樹木の管理に、独自の「スコアシート」を用いていることです。樹木に病害虫が発生したときに、「キャンパス開設前から自生していた樹木」にはプラス点、「人や施設に被害を及ぼしそうな樹木」にはマイナス点というように点数化し、点数に基づいて治療するか伐採するかなどを決める──。そんな客観的で緻密なエビデンスに基づく徹底した姿勢が、この美しい緑地の存在を支えています。

伝統の日本酒「国府鶴」復活。100ヘクタールの水田に託した、ある社長の夢

そんな農工大がいま熱い想いを注いでいるのが、東京都内に残された貴重な水田環境を未来へと繋ぐ、希望に満ちた取り組みです。「東京だからこそ、この豊かな水田を次の世代へ誇りを持って引き継いでいきたい」──。

先生方は、残された瑞々しい田んぼを前に、未来への強い決意を語ります。東京の水田は戦後の高度成長とともに減少の一途をたどり、残された水田はわずか100ヘクタール程度。府中はその東端にあたります。この大切な水田を未来へ繋ぐため、大学、農家、酒蔵が手を取り合う一大プロジェクトが立ち上がりました。

きっかけは、江戸時代から続いてきた地元の酒蔵のホームページに書かれていた「いつか酒造を復活させたい」という社長さんの切実な願いを、先生方が見つけたことでした。それまでは長野県の酒蔵さんの協力で細々と地酒を作っていましたが、「大学の知見で、なんとか応えられないか」とプロジェクトチームが動き出し、ついに伝統の銘柄「国府鶴(こうづる)」を見事に復活させたのです。農学部で開発し2022年に品種登録したお米「さくら福姫」を使ったお酒も発売開始し、今では大学のアイデンティティとして深く愛されています。

かつて平安・江戸時代から米どころだった武蔵国の広大な農地。そこでお米を作り、地域産業へ社会実装していく前向きな取り組みは、自然共生サイトの認定によってさらに加速しています。

(3枚の写真)田んぼ、カエル、酒蔵で作られた酒

空気のような当たり前の価値に、「ありがたみ」という看板を掲げて

先生方は、嬉しそうにこう語ってくださいました。

「『自然共生サイト』という看板がついたことで、空気のように当たり前で見えづらかった価値に、ありがたみが生まれたんです。米作りに協力してくれている地域の方にも、生き物にとって大切な場所なんだと認識してもらいやすくなりました」そのあたたかな変化は、周辺で減農薬農業に挑戦する農家さんを増やすという、素敵なネイチャーポジティブの循環を生んでいます。

外来植物の除去や、ニホンミツバチの養蜂に主体的に取り組む学生たちについて、先生方は「大学側が無理に働きかけているわけではないんです。もともと関心の高い学生が集まって自発的に動いている。それ自体が大学の強み」と太鼓判を押します。そして、自然共生サイトへの認定をきっかけに、近隣で自然共生サイトの認定を受けている国際基督教大学(ICU)や東京学芸大学との新しい「地域のつながり」も生まれました。大学の強みを生かした「知のネットワーク」が、地域を包み込むように優しく広がっています。

(2枚の写真)外来植物を抜く生徒たち、蜂の巣とミツバチ

ヒント:大都市の緑を科学する、確かな「データ」と「社会実装力」をパートナーに

  • 都市部での緑地管理に不可欠な、樹木の「スコアシート評価」など、体系的なエビデンスの取得は企業・団体の環境配慮の取組を支える客観的な評価手法として活用できます。

  • 「国府鶴」の復活劇のように、最先端の農林業技術を地域の産業やブランドへと結びつけ、市場へ届ける「社会実装のノウハウ」を一緒に体験できます。

  • 環境意識を持って自発的に汗を流す優秀な学生たちとの出会いそのものが、企業・団体の次世代を担う大きな財産になります。

関連リンク

「東京農工大学府中キャンパスと本町水田」の詳細


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