群馬県 上野村

森とエネルギーの循環が1000人の村に移住者を増やす

  • #地域への貢献
  • #事業プロセス

この事例のポイント

  • 1 外に出ていたお金を村内で循環させる
  • 2 災害時の停電ゼロを実現するマイクログリッド
  • 3 再エネによる地域産業活性化を、移住先として選ばれる理由に

山あいの小さな村が、エネルギー自給に乗り出した理由

群馬県の最西南端に位置する上野村(うえのむら)は、深い山々に囲まれ、森林は面積の95%を占めます。この豊かな森を背景に、林業、木工業、農業が発展し、生椎茸の生産量は県内2位を誇ります。一方で、必要な電力については外部から買って賄う必要がありました。

「冬の暖房費や特産品のきのこ栽培に使うビニールハウスの維持費の高騰が村の経済を直撃することがあり、その後の2019年の台風による停電などの経験から、災害時の停電ゼロを含む“Ueno5つのゼロ宣言”を2020年に表明。地域マイクログリッド構築事業をスタートしました。」(上野村役場 小池氏)

設置されたのは小型180kWの木質バイオマス発電施設で、きのこの栽培施設である「上野村きのこセンター」の電力を賄っています。また、未利用であった村の間伐材を圧縮加工したペレットを活用するペレットボイラー施設を設置することで温水や温風を宿泊、農業関連の施設に供給しています。

「木を植えてからペレット材料として使えるようになるまでは25年の循環サイクルです。外から電気を買うのではなく、自分たちの山の恵みで電気を作る。小型木質バイオマス施設の整備は今後も5箇所ほど、計画しています。」(上野村役場 小池氏)

これらは平常時の電力創出に加え、災害時インフラに危機が訪れた場合の非常時電源確保にも貢献します。また針葉樹である杉・カラマツを使用した圧縮ペレットから、広葉樹を粉砕したチップを使用することで森林の6割を占める広葉樹の活用が可能となり、林業従事者の増加も期待されます。外に出ていたお金を村内で循環させる、上野村ならではの事業モデルが誕生しました。

上野村役場 小池氏

マイクログリッドがもたらしたのは「安心」と「自信」

上野村ではueno5つのゼロ宣言の一つ「災害時の停電ゼロ」を目指して、非常時に電力会社の供給が長期喪失した場合でも避難施設エリア内で電力を自給自足して融通する”地域マイクログリッド“の構築に取組んでいます。

具体的には学校や公共施設に設置された太陽光発電設備、蓄電池、非常用発電設備を、非常時のマイクログリッド電源としてエネルギーマネジメントシステム(EMS)で制御することで効果的な電力運用を実現します。

「災害等により長期間の停電が発生した場合には、避難所となっている小学校がある一つの地域に電気を送り届けることができるようになりました。今後も地域を拡大していきたいと考えています。」(上野村役場 小池氏)

視察や見学に訪れる問い合わせも多く、

「村外の方からも“すごいですね”と言われることで、村の子供たちが地元の自然の豊かさを再認識するきっかけにもなっています。停電ゼロという目標が、地域みんなの自信につながりました。」(上野村役場 小池氏)

上野小学校に設置されているマイクログリッド

「エネルギー100%自給」が、次世代を迎え入れるキーに

上野村の最終的な目標は「エネルギー自給率100%」の達成です。

人口1000人のうち、2割を数える移住者の移住理由の一つとして挙げられる、自然豊かな暮らしと林業や木工業への就業。

それを支える脱炭素+地域マイクログリッドによる持続可能な循環モデルに加えて、山村留学制度をはじめとする様々な取り組みも、この場所を選んでもらうきっかけとなっています。

「林業、農業という地域の産業を支え、災害時の安心の拠り所となる“無駄のない循環”をさらに推し進めたい。それが若者の雇用を生み、村の活気へとつながります。」(上野村役場 小池氏)

また、再エネを軸とした環境教育にも力を入れています。

「次世代を担う子供たちに、自分たちの村の電気はどうやって作られているのか、なぜ森を守る必要があるのかを、肌で感じてほしい。自分たちが使う分を自分たちで賄う。そんな当たり前のことが、これからの時代には最も価値ある考え方になると信じています。」(上野村役場 小池氏)

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