この事例のポイント
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耕作放棄地を営農型太陽光発電により農地として再生
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市民出資と利益の地域還元が循環
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若手農家の移住に加えて、アウトドアの世界的ブランドも参画
拡大し続けた耕作放棄地は、どのように再生したのか
千葉県匝瑳市(そうさし)の飯塚・開畑地区には、40年以上前に山を削ってつくられた80ヘクタールの農地が広がっていました。水はけが悪く痩せているために農地に適さなかったことに加え、高齢化や後継者不足に伴って耕作放棄地が増加し、そのような場所への不法投棄なども問題になっていました。
「高齢化で農業を続けたくても続けられない以外にも、採算が合わないなどの理由からも耕作を諦める農家は増える一方でした。」(当時の農業を知る方)
このような地域の課題に対して、環境問題や自然エネルギーの活用を目指す複数の団体の代表・理事クラスが集まり「市民エネルギーちば」を2014年に立ち上げました。そこでは、自分たちでつくる市民の発電所として、「農地の上部空間を活用した営農型太陽光発電」を推進するようになります。
2014年9月、日本で初めての市民出資型の「匝瑳第一市民発電所」を建設。太陽光パネルの下で農業を行いながら発電も行う「農地と共存する再エネ」の実証実験を進めることで、耕作放棄地を農地へと再生することに成功します。
そして今では全国の営農型太陽光発電の先進地として、国内外から年間3,000人以上の視察者が訪れる場所となりました。
農地復興と発電を両立する、市民出資の地域還元モデル
市民エネルギーちばの取り組みは、2019年に起きた台風による大規模停電の際にも重要な役割を担いました。
営農型太陽光発電で発電した電気を使って、市民向けに無料のスマートフォン充電ステーションを開設し、災害時の非常用電源として地域を支えたのです。
このようなスムーズな連携のベースには、地域で育まれた信頼関係がありました。その背景に、“自分たちで、市民発電所を作ろう”という設立意志に基づき、出資金の大小に関わらず一人一票ずつの議決権を持ち、全員が納得できる利益の活用を徹底したことが挙げられます。
具体的には売電収入の一部が耕作放棄地となっていた土地の農地復元費用に充てられるほか、農地を提供した地権者に地代が払われることで、農業を継続するための原資となっています。農業法人にとっても安定収入が得られ、事業計画が立てやすくなります。売電収入は新規就農支援や環境教育のための寄付金としても活用されることで、地域を活性化する仕組みとして機能しています。
若手農家の移住が増え、企業も参画する未来の農地
「営農型太陽光発電以外に市として力を入れているのは公共施設や民間施設、一般家庭への太陽光発電の導入です。初期費用ゼロで太陽光発電施設を導入できる形とするなど、脱炭素先進地域としての実績をさらに積み上げていきたいと考えています。」(匝瑳市役所)
近年は企業の取り組みも進んでいます。その一例として、アウトドアの世界的ブランドであるパタゴニアは2019年、営農型太陽光発電事業に出資・参画。匝瑳市飯塚にある2設備で生み出された再エネ電力は、新電力を経由して東京のオフィス・店舗で使われています。
再生された畑では有機農業を手がける農業法人や若手農家の移住も増え、大豆を使った加工品の開発など新しい取り組みが生まれています。かつての「耕作放棄地」から未来の農地を生み出すための挑戦は続きます。
