長野県 王滝村

スキー場跡地の太陽光発電が若者を呼び戻すきっかけとなる

  • #地域への貢献
  • #景観への配慮

この事例のポイント

  • 1 人口の減少と、観光産業の低迷。閉鎖されたスキー場跡地の再活用へ
  • 2 景観への配慮、排水対策など地元を知ることから進んだ丁寧な開発プロセス
  • 3 売電収益の一部を若者のU・Iターン者向け補助金の原資に

スキー場閉鎖、人口減少の中で起きた御嶽山の噴火

長野県木曽郡にある王滝村(おうたきむら)は、山間部にある人口約600人の小さな村です。かつてのスキーブームの頃には年間50〜60万人が訪れた村営スキー場も、温暖化とレジャー需要の変化により年々客足が減り、ゲレンデの一部は2007年に閉鎖されていました。また、多くの被災者を出した2014年の御岳山噴火もあり、人口減と財政難という厳しい環境下で、スキー場跡地をどう活かすかは、村の課題のひとつでもありました。

王滝村役場の総務課に勤務する藤田氏は、語ります。

「2014年の御嶽山の噴火により、この村では災害復旧に全力で対応することとなりました。元来観光を売りにしてきたことから観光産業に頼ってきた一方、それ以外の産業が弱かった経緯もありました。若者の流出も続いており、この先自治体を活性化させるためには若者の定住のための施策も必須でした。」

このような状況の中で、村にとって長年の課題だったスキー場跡の遊休地を活用して生まれたのが、南向きのゲレンデ斜面を活かした大規模太陽光発電施設でした。

地元の課題を知るところから、景観への配慮まで丁寧に進行

発電施設整備へと歩みを進めるきっかけは、のちに再エネ事業を村に提案した高尾康太氏との出会いでした。高尾氏は、王滝村初の地域おこし協力隊員として村で3年間暮らした経験があり、その後、再エネ事業会社に入社していました。入社後に、かねてから抱いていた「再エネで王滝村を活性化できないか」というアイディアを実現するべく、当時の村長に自ら提案したことが、本事業を始めるきっかけとなりました。

2016年から王滝村は事業者と協議を重ね、標高1,000メートルを超える国内有数の高地におけるメガソーラー「王滝村スキー場跡地太陽光発電所」が完工。2021年11月に出力約2.9MWの発電所として売電を開始しました。

「以前にも、民間事業者がスキー場の跡地を掘削して地熱発電の事業化を試みたことがありましたが、それはうまくいきませんでした。バイオマスや水力についても、推進したものの事業化には至らなかった過去があるだけに、今回の取り組みは、大きな成果となりました。」(王滝村役場 藤田氏)

開発にあたっては、景観への配慮がポイントとなりました。

「住民の方から、幹線道路やキャンプ場からは太陽光パネルが見えない方がいいという声が上がりました。そこで太陽光パネルの設置はゲレンデの一部のゾーンにとどめることとなりました」(王滝村役場 藤田氏)。

景観以外にも、長年にわたって住民から声が上がっていたゲレンデ下の住宅地の排水問題にも対処。

「閉鎖されたゲレンデ下の地域は雨が降ると住宅の前が水浸しになっていました。発電施設の施工に合わせ、住民の方のご要望に合わせた仕様で水路を整備したことで、この排水問題も軽減されました。再エネ設備の設置においては準備の過程で住民の方のお声を聞くことで、このような地域課題の改善が同時にできると考えています。」(自然電力 高尾氏)

施設付近の草刈り・除雪も地域の林業事業者に委託したことで、地域経済への還元という意味合いにおいても地元からも歓迎される事業になりました。

(左から)自然電力 高尾氏、王滝村 越原村長

地域のソーラー施設が、若者を呼び戻すきっかけに

本プロジェクトのもう一つの大きな成果は、若者を地域に呼び込むきっかけとなったことです。2022年8月に村と事業者が締結した「地域貢献事業に関する基本合意書」に基づいて、売電収益の一部を2039年まで毎年村に寄付。これが「王滝村奨学金返済支援補助金制度」の原資となり、村にU・Iターンして5年以上居住・就業する20〜30代の若者の奨学金返済額の最大7割を補助する制度が実現しました。

「王滝村では若者支援を打ち出しています。なかでも『奨学金の返済に困っている』というまちの声を聞き、これを支援する制度を村として立ち上げたことは、大きな一歩です。村から出ていった若者のUターンだけでなく、新たに村に移住するIターンの人々も支援しています。」(王滝村役場 藤田氏)

本事業は太陽光発電協会の2023年度の「ソーラーウィーク大賞」特別賞を受賞。さらに2026年には経済産業省・資源エネルギー庁の「地域共生型再生可能エネルギー事業顕彰」にも選ばれるなど、多数の評価を獲得しています。

「発電所ができたことで、長年手が届かなかった課題にも向き合えるようになりました。若い人に定住してもらうための具体的な仕組みは、未来への大きな投資です。」(王滝村役場 藤田氏)

王滝村
Good Echo トップ
ページ上部へもどる