知床の豊かな海がもたらす「生と死」
2026/7/6
羅臼の豊かな海には、数多くの海生哺乳類が暮らしています。
船の上から大海原を泳ぐ姿を間近に観察できるのはもちろん、陸からでも、じっくり目を凝らせばその姿を見つけられることがあります。

しかし時に、そんな動物たちと「海と陸の狭間」で、少し悲しい出会いをしてしまうこともあります。
何らかの理由で命を落とした動物たちが、羅臼の海岸に打ち上げられること(ストランディング)があります。
イルカやシャチ、トド、アザラシ、時には巨大なクジラ類が漂着することも珍しくありません。

羅臼が面する根室海峡は、岸から急激に深くなる「深海地形」が特徴です。
そのため、普段は目にすることのできない珍しい種類のクジラ類が漂着することもあり、これらは貴重な科学的発見につながることもあります。
また、時には死骸だけでなく、衰弱した幼獣やケガを負った個体が座礁し、保護されるケースもたびたび発生します。

海岸に打ち上げられたトドやクジラの死骸は、本来であれば鳥類や陸上生物たちの貴重な糧となり、自然へと還っていきます。
しかし、ここ羅臼において、その死骸がヒグマに見つかると困ったことになります。
ヒグマは動物の死骸の匂いに強く引き寄せられます。
さらに、一度見つけた獲物への執着心が非常に強く、近づく者を敵とみなして攻撃したり、獲物を守るために隠し、それを近くで見張っていたりする習性があります。
もし、餌を探して徘徊するヒグマに死骸が見つかってしまえば、人間はその場所にしばらく近づくことすらできなくなってしまいます。
そのため、生活道路や漁場に近い場所に漂着した場合は、ヒグマが匂いを嗅ぎつけてやって来る前に、迅速に死骸を撤去しなければなりません。
つい先日も、風向きや潮の流れの影響からか、立て続けに漂着死骸が発見され、対応に追われました。

知床岬トレッキングの際にもストランディングに遭遇する可能性があります。
もしも海岸で野生動物の死骸や、座礁して動けなくなっている個体を見かけた際は、決してうかつに近づかないでください。
ヒグマが近くに潜んでいる可能性があり大変危険です。
発見した場合は、速やかに羅臼町役場にご連絡をお願いいたします。
ご連絡の際は、「いつ」「どこで」「どのような状態か(種類や大きさ、生存の有無)」をお伝えください。
海と陸が密接に繋がる羅臼だからこそ起こるストランディング。
安全に自然と付き合うために、適切な行動を心がけましょう。
いしい