知床岬巡視報告【6月20日~6月22日】
2015/06/29
環境省で毎年行っている知床岬巡視。
2泊3日、合計27時間の徒歩移動という厳しくもやりがいのある巡視を、今年も無事に終えることができました。
ここでは、巡視で得ました最新の知床岬情報を巡視日程に合わせてお伝えします。
(1日目:相泊→滝ノ下、2日目:滝ノ下→知床岬までを掲載します。)
トレッキングコースの危険個所の現状と計画の際の注意点について、掲載しますので、
知床岬へのトレッキング等をご検討中の皆様の参考なればと思います。
~6月20日(土)くもり~
巡視1日目(相泊 → 念仏岩)
5時00分:相泊出発
巡視開始!
ここから長く厳しい知床岬への巡視が始まります。

最初に見えてきたのがカモイウンベ川。
先月までなかった橋が今ではご覧の通り。
今月ようやく架橋されたこの橋。
もう、足を凍てつくような冷たい水の流れる川に浸すことなく通ることができると思うと、嬉しい限りです。


次に見えてくるクズレハマ川でも、橋が整備されており、沢を安全に渡ることができます。


7時00分:観音岩(高巻)
最初の危険個所。20mほどの垂直に近い岩場です。
下部は手がかりが多いのですが、もろく、抜け落ちることがあります。
上部は粘土質の滑りやすい沢型で、手掛かりとなるものがほぼありません。
雨天時には非常に滑りやすくなり、さらに危険です。
クライミングロープ、ハーネス、ヘルメット等を持参してください。
※ロープはついていますが、老朽化が進んでいるので、使用は控え、持参したものをお使いください。


8時20分:トッカリ瀬
干潮時には飛石を利用して通過することが可能ですが、満潮時には通過できなくなります。
干渉時でも渡れる岩場には海藻類が付着しており、非常に滑りやすいので、通行の際はご注意ください。
岩肌が荒い場所も多いので、手袋、転倒時の被害軽減様にヘルメットを着用することをおすすめします。


10時20分:タケノコ 岩周辺の巨石地帯
人の背丈を越える巨石が多く、通過には体力とテクニックが要求される個所です。
岩肌は非常に荒く、転倒すると大怪我につながります。
また、ルートには乗り越えるのに時間を要する巨石もあります。


13時10分:近藤ヶ淵(高巻、へつり)
高巻と海中へつりのいずれかで通行可能。
高巻は、脆い岩場と植物が茂る急斜面です。
植物が茂る斜面では、足場が見え辛く、斜面のきわを通るコースでは、滑落の恐れのある足場があるので注意。
へつりは干渉時でも膝まで海中に没します。
泳いで通行することも可能ですが、6月の平均水温は10℃以下、7月でも12℃前後と非常に冷たいです。
高巻よりも早く通過することができますが、海の状況をよく見て、個人のスキルに合わせて判断してください。


15時40分:念仏岩
歩き始めてから10時間40分でこの日の目的地に到着。
ここでテントを張り、翌日の知床岬へのアタックに向け休息しました。

~6月21日(日)晴れ~
巡視2日目(念仏岩 → 知床岬)
6時30分:念仏岩出発。
念仏岩(相泊側)。すぐに念仏岩相泊側の高巻に入ります。
背の高い植物が茂っているので、滑落にご注意ください。

念仏岩(知床岬側)。
手をかけにくく、滑りやすい10mほどの垂直の岩壁があります。
往路では懸垂下降、復路もロープなしで登るのは非常に困難。
クライミングロープ、ハーネス、ヘルメット等必須です。


7時50分:カブト岩(知床岬側の高巻)
標高差100mに及ぶ沢型の高巻です。
上部は土が露出した垂直に近い斜面で、年々洗堀が進んでいます。
手がかりはなく、ロープなしでの登降は非常に体力を消耗し、危険です。
頭頂部に支点となる立木や岩等がないため、アンカー持参が必須です。
中央部から下部にかけて土の上に崩れた石が堆積している急斜面があり、非常に落石しやすい状態です。
足場を崩しながら登ることになるので、登りは体力を激しく消耗します。
必ず、トレッカー同士距離をとって行動し、特に大人数パーティーの場合は、通過にかなりの時間を要するので、時間配分をしっかり練る必要があります。


10時10分:知床岬着
合計移動時間14時間20分。数々の危険個所を越え、知床岬に無事到着しました。

今回掲載したものは、数ある危険個所の一部です。
他にもメガネ岩のへつりやモイレウシの高巻といった危険個所や、干潮時にしか通過できない剣岩などの難所が存在しています。
知床半島先端部利用の心得 [PDF](知床データセンター) をよく読み、計画を立ててください。
ヒグマ対策についても詳しく掲載されているwebサイト「シレココ」も併せてご覧ください。
(今回の巡視では合計で7頭のヒグマに出会っています。)
また、出発前にはルサフィールドハウスに来館していただき、現地情報の収集を行ってください。
ヒグマ対策のクマスプレーとフードコンテナを同館でレンタルすることが可能です。
装備を整えてから出発してください。
なお、地図の配布は行っておりません。
出発前には地形図(2万5000分の1もしくは5万分の1)をご準備ください。
地形図からは水の取れる河川も掲載されており、大変有効です。
無料配布されている観光用マップ等は、バックカントリー利用には不向きです。
自分のことは自分で守る」ことが大前提となる知床岬トレッキング。
利用は計画的に、自分の体力、技術をしっかりと見定めてから、挑戦してください。
環境省 羅臼自然保護官事務所 アクティブレンジャー 宮奈