雑食性で、その季節に手に入りやすい食べ物を大量に食べます。春から夏にかけては、イラクサ、フキ、ミズバショウ、サクラ類の果実、ハイマツ、アリやハチの幼虫なども食べます。秋にはドングリやカラフトマス、シロザケなどを食べて、皮下脂肪をためこんで冬眠に備えます。
基本は昼行性(昼間に活動)ですが、人間や他のヒグマに対する警戒心の高い個体は、夜間に行動することもあります。排他的な「なわばり」は持たず、エサの豊富なところには複数のヒグマが集まります。交尾期のオス成獣どうしは互いに激しく争います。
自然のエサが不足する場合は、農作物を食べることもあります。万一、干し魚や生ゴミなど、高栄養な人間の食べ物を口にし、その味を覚えてしまった場合には、それらに非常に執着するようになり、「倉庫内に侵入する」「人間につきまとう」など、人身事故を引き起こす可能性の高い極めて危険な生き物に変化してしまいます。
食物が少なくなる12~3月頃まで、自分で掘った穴の中などで冬眠します。クマ類の冬眠はあまり体温を下げないため、外からの刺激で起き出すことがあります。道東では、冬眠穴そばで2月に人身事故が発生した事例もあります。
手をたたく、大きな声を出す、鈴を鳴らすなどして人の存在をヒグマに知らせ、バッタリ遭遇しないようにすることが最も重要です。音を出していてもヒグマと出会ってしまうことはありますが、ヒグマが人の存在を事前に察知していれば、攻撃される危険性は低くなります。見通しの悪いところやヒグマが潜んでいそうなヤブのそばなどでは、特に注意が必要です。このような場所では、あらかじめ音を出す、時々立ち止まって周囲の物音をよく聴くなどの行動しましょう。
弁当・飲料の空き容器や食べ残しなどのゴミを野外に放置すると、嗅覚が鋭いヒグマを誘引してしまいます。さらに、人の食べ物の味をヒグマに覚えさせてしまうことにもつながります。人の食べ物に餌づいたヒグマは、人につきまとうようになって大変危険です。ゴミは必ず持ち帰り、野外に捨てたり埋めたりすることは絶対にしないでください。
早朝や夕暮れ、夜間は見通しが悪いため、特に注意が必要です。単独行動は、万一、人身事故が発生した場合は生還できる確率が大幅に低下するため、なるべく複数人でまとまって行動するようにしましょう。
知床国立公園は全域がヒグマの生息地です。目撃情報などを事前によく確認しておき、目撃の多い場所にはなるべく近づかないようにしましょう。
人と遭遇した時は、ヒグマも不安を感じたり、興奮したりしています。大騒ぎする、急に動く、背中を見せて走って逃げる、あるいはヒグマに近づくなどの行為は大変危険です。
知床では、車で移動している最中に、ヒグマと出会うことがあります。道路沿いでヒグマを見かけても、むやみに停車させたり、車から降りないでください。単なるヒグマ見たさの欲求は、長時間の停車による渋滞を引き起こし、交通事故の原因となります。また降車して、ヒグマへ接近すると、大けがや死亡事故を引き起こすので、降車しないでください。
ヒグマは個性豊かで、置かれている状況も様々です。すべてのヒグマが人を気にしない、人の接近を許容するようなものではありません。また仔グマの近くには、たいてい母グマがいます。うっかり仔グマに接近してしまうと、仔を守ろうとする母グマから威嚇突進され、ケガや死亡事故に繋がります。大変危険ですので、特に仔グマには絶対に近寄らないで下さい。
クマとの距離が遠い場合は、静かにその場を離れてください。走ったり騒いだりすることは厳禁。近い場合は、背を向けず、ゆっくりと後退してください。ヒグマには逃げるものを追う習性があります。すぐ近くの場合は、じっとしてクマが立ち去るのを待ってから、その場を離れましょう。また、ヒグマは奪った物を自分の物とみます。取り返そうとすると反撃に遭うので、絶対にやめましょう。
ヒグマは時速50kmほどで走ることができ、木登りも泳ぎも得意です。逃げ切ることは困難ですので、あわてずゆっくり距離をとりながら、クマ撃退スプレーの発射準備をしましょう。至近距離まで来てしまったら、クマの目と鼻をめがけて一気に全量を噴射します。万が一接触を伴う攻撃を受けた場合は、体を丸めて地面に伏せ、両腕で首や頭を守りましょう。致命傷を防止できる可能性が高まると言われています。